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天然資源である鉄鉱石を還元(石炭等で酸素を除去)、精錬(不純物を除去)し、圧延・熱処理・表面処理などのプロセスを経て、様々な特性、形状の鉄鋼製品が製造されます。鉄鋼製品はその後、自動車や家電製品などの耐久消費財、船舶や鉄道などの大形輸送機器、飲料や食品の容器、様々な機械やプラント、ビルや橋梁などの社会インフラなどに形を変え、最終製品として使用されます。これらの製品が社会においてその役割を終えたあと、素材部分の鉄鋼はほぼ全量がスクラップとして回収され、再び新たな鉄鋼製品の原料として再利用されます。
それにより、天然資源の使用量を減らし、消費エネルギーと環境負荷を大きく減らすことができています。そして再び新たな鉄鋼製品として自動車やビルとなり、いつの日か再びスクラップとして回収され、このライフサイクルが無限に繰り返されています。鉄鋼製品はこのようなクローズドループリサイクルにより、昔から効率的にリサイクルされています。
自律的・持続可能な素材リサイクルを可能とするための条件は大きく5つ挙げられます。以下に示すように、鉄鋼はこれらのすべての条件を満たす非常に優れた素材です。
ほとんどすべての工業製品は複数の素材で構成されています。そのため、素材のリサイクルのためには、他素材と簡単に分別(分けて処分すること)、選別(混合物から選り分けること)ができることが極めて重要です。鉄鋼は工業素材の中で事実上唯一磁性を有する素材であるため、磁力選別によって容易に他素材、他金属と選別ができ、シュレッダーダスト(シュレッダーで細かく裁断されたゴミ)や焼却灰などに含まれる微小な鉄片でさえも簡単に回収することができます。鉄は仮に分別回収されていなくても、廃棄物処理場で必ず磁気選別が行われ、ほぼ全量が回収、リサイクルされているのです。
素材の再生利用によるエネルギー消費や環境負荷が天然資源からの製造の場合よりも大きくなってしまっては、本来のリサイクルの目的に反する結果になってしまいます。鉄スクラップは転炉(精錬を行う酸素吹込み炉)や電気炉での溶融、精錬処理で容易に製品特性をリセットできる上、簡単な処理で新たな鉄鋼製品に再生することができるため、天然資源から作るよりも圧倒的に少ないエネルギー消費や環境負荷でリサイクルできます。
リサイクルにかかる費用が大きければ、自律的、持続可能なリサイクルシステムは実現できません。鉄鋼スクラップはほとんどの国や地域でリサイクルに関する社会システムが整備されており、スクラップの回収も、原料としての利用も、経済合理的に行われています。このような経済合理的なリサイクルシステムが国際的に整備されている素材は、実はあまり多くはありません。
回収された素材は多様な特性の新たな製品にフレキシブルにリサイクルできることが重要です。同一の成分で揃えて回収、リサイクル(水平リサイクル)できれば比較的容易にリサイクルできますが、リサイクルの対象となる回収物の量と、リサイクル先になる製品の量のバランスが需給ニーズ等によって一致しない場合には、せっかく負荷をかけて分別した回収物が有効に利用しきれず、余ってしまう場合もあります。一方、鉄鋼製品の多様な機械特性は、主として生産工程における温度制御・加工(圧延等)制御で作り込まれる「結晶組織」によって発現されるため、スクラップは転炉や電炉で溶融されると、それらの特性は一旦リセットされます。そしてリサイクル後は新たな熱、加工制御により、新しい組織が作り込まれることにより、スクラップの種類にあまり縛られず、再生後の用途も選ばずに多様な製品に生まれ変わることができるのです。
素材を分別して回収できたとしても現実には様々な添加成分(金属の場合は合金)を含む混合物であることが多く、リサイクルによって材料の品質低下が生じてしまうと、何度もリサイクルすることが困難になります。鉄鋼の場合、多くの不純物を精錬の過程で酸素吹込みという簡単な方法により酸化させて分離除去することができます。そのため、不純物をほとんど除去でき、品質低下を招きにくいという優れた性質があり、これが鉄鋼素材の無限のクローズドループリサイクルを可能としています。酸化除去という簡単な方法で不純物を取り除ける素材は、金属の中でも鉄鋼くらいです。
出典:日本製鉄(株)
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鉄鋼製品のライフサイクルとリサイクル
天然資源である鉄鉱石を還元(石炭等で酸素を除去)、精錬(不純物を除去)し、圧延・熱処理・表面処理などのプロセスを経て、様々な特性、形状の鉄鋼製品が製造されます。鉄鋼製品はその後、自動車や家電製品などの耐久消費財、船舶や鉄道などの大形輸送機器、飲料や食品の容器、様々な機械やプラント、ビルや橋梁などの社会インフラなどに形を変え、最終製品として使用されます。これらの製品が社会においてその役割を終えたあと、素材部分の鉄鋼はほぼ全量がスクラップとして回収され、再び新たな鉄鋼製品の原料として再利用されます。
それにより、天然資源の使用量を減らし、消費エネルギーと環境負荷を大きく減らすことができています。そして再び新たな鉄鋼製品として自動車やビルとなり、いつの日か再びスクラップとして回収され、このライフサイクルが無限に繰り返されています。鉄鋼製品はこのようなクローズドループリサイクルにより、昔から効率的にリサイクルされています。
図表1:鉄鋼製品のライフサイクル
図表2:日本の鉄鋼循環図
自律的・持続可能な素材リサイクルの要件と鉄鋼素材
自律的・持続可能な素材リサイクルを可能とするための条件は大きく5つ挙げられます。以下に示すように、鉄鋼はこれらのすべての条件を満たす非常に優れた素材です。
ほとんどすべての工業製品は複数の素材で構成されています。そのため、素材のリサイクルのためには、他素材と簡単に分別(分けて処分すること)、選別(混合物から選り分けること)ができることが極めて重要です。鉄鋼は工業素材の中で事実上唯一磁性を有する素材であるため、磁力選別によって容易に他素材、他金属と選別ができ、シュレッダーダスト(シュレッダーで細かく裁断されたゴミ)や焼却灰などに含まれる微小な鉄片でさえも簡単に回収することができます。鉄は仮に分別回収されていなくても、廃棄物処理場で必ず磁気選別が行われ、ほぼ全量が回収、リサイクルされているのです。
素材の再生利用によるエネルギー消費や環境負荷が天然資源からの製造の場合よりも大きくなってしまっては、本来のリサイクルの目的に反する結果になってしまいます。鉄スクラップは転炉(精錬を行う酸素吹込み炉)や電気炉での溶融、精錬処理で容易に製品特性をリセットできる上、簡単な処理で新たな鉄鋼製品に再生することができるため、天然資源から作るよりも圧倒的に少ないエネルギー消費や環境負荷でリサイクルできます。
リサイクルにかかる費用が大きければ、自律的、持続可能なリサイクルシステムは実現できません。鉄鋼スクラップはほとんどの国や地域でリサイクルに関する社会システムが整備されており、スクラップの回収も、原料としての利用も、経済合理的に行われています。このような経済合理的なリサイクルシステムが国際的に整備されている素材は、実はあまり多くはありません。
回収された素材は多様な特性の新たな製品にフレキシブルにリサイクルできることが重要です。同一の成分で揃えて回収、リサイクル(水平リサイクル)できれば比較的容易にリサイクルできますが、リサイクルの対象となる回収物の量と、リサイクル先になる製品の量のバランスが需給ニーズ等によって一致しない場合には、せっかく負荷をかけて分別した回収物が有効に利用しきれず、余ってしまう場合もあります。一方、鉄鋼製品の多様な機械特性は、主として生産工程における温度制御・加工(圧延等)制御で作り込まれる「結晶組織」によって発現されるため、スクラップは転炉や電炉で溶融されると、それらの特性は一旦リセットされます。そしてリサイクル後は新たな熱、加工制御により、新しい組織が作り込まれることにより、スクラップの種類にあまり縛られず、再生後の用途も選ばずに多様な製品に生まれ変わることができるのです。
素材を分別して回収できたとしても現実には様々な添加成分(金属の場合は合金)を含む混合物であることが多く、リサイクルによって材料の品質低下が生じてしまうと、何度もリサイクルすることが困難になります。鉄鋼の場合、多くの不純物を精錬の過程で酸素吹込みという簡単な方法により酸化させて分離除去することができます。そのため、不純物をほとんど除去でき、品質低下を招きにくいという優れた性質があり、これが鉄鋼素材の無限のクローズドループリサイクルを可能としています。酸化除去という簡単な方法で不純物を取り除ける素材は、金属の中でも鉄鋼くらいです。
図表3:鉄鋼のリサイクル(イメージ)
出典:日本製鉄(株)