見学の前にチェック!
■鉄はいろいろな工場でつくられている
「鉄をつくる工場」とひと言で言っても様々な種類があります。大きく分けると、
1.高炉(溶鉱炉)で鉄鉱石から銑鉄をつくり、それを鋼にし、さらに鋼材をつくる銑鋼一貫製鉄所
2.電気炉で鉄スクラップを溶かして鋼をつくり、鋼材を生産する電炉工場
3.高炉も電気炉も持たず、圧延設備で半製品から鋼材をつくる単純圧延工場(単圧工場)
の3つに分類されます。
一般的に「鉄をつくる工場」としてイメージされるのは塔のように高い高炉がそびえ、年間生産量1,000万トン以上を誇る一貫製鉄所だと思いますが、年産数万トン〜数十万トンの工場をはじめ、鉄を加工して様々な鉄鋼製品を生産する工場も全国各地にたくさんあるのです。
■まるで一つの都市のような製鉄所
大きな一貫製鉄所の敷地の広さは、およそ1700万平方メートル。東京ドームに換算すると約360個分にも及ぶほどです。
この広大な敷地には各種の工場や鉄をつくる原料を保管しておくストックヤード、事務所などが配置されていて、それぞれの施設を結ぶ連絡バスが定時運行し、交差点には信号機まで設置されています。その他にも輸送用の鉄道が工場と工場を結び、巨大な輸送車が路上を走っています。
また、設備や製品を冷却するための大量の水を供給・回収・浄化して再利用する設備、発生したガスを回収・配給するパイプライン、自家発電所、変電所など、水やエネルギー関連の施設もたくさんあります。さらに酸素発生設備や副産物(スラグ等)の精製工場なども稼動しています。
製鉄所はまるで、一つの都市と言ってもいいほどです。
■日本の製鉄の歩み
日本では9世紀頃から出雲地方を中心に、砂鉄と木炭を原料に「たたら」と呼ばれる独特の小規模な製法で、鉄づくりが行われていました。明治時代のはじめ頃までこの「たたら」による製鉄が行われ、世界的に有名な日本刀や、様々な農耕具の鉄がつくられました。
江戸時代の終わりには、ヨーロッパの進んだ製鉄技術が取り入れられ、日本最初の洋式高炉が今の岩手県釜石市に完成しました。規模の大きい製法で鉄がつくられるようになりました。
近代製鉄の幕開けは1901年(明治34年)。北九州の八幡に大規模な官営八幡製鉄所が建設されたのがその始まりです。以降、近代産業の発展とともにその後日本の鉄づくりは著しい発展を遂げ、今日では世界最高水準の設備と技術を持つ、世界有数の製鉄大国へと成長するに至っています。