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2023年 北野会長年頭挨拶

2023年1月5日

 新年あけましておめでとうございます年頭に当たりましてご挨拶申し上げます

 昨年は、米国などの主要国における金融引き締め政策を主要因とした急激な為替の変動影響やロシアによるウクライナ侵攻に端を発した資源・エネルギー価格の高止まりなど、我が国経済に多大な影響を及ぼしましたが、当連盟会員各社におかれましては、様々な企業努力によりこれら困難な状況を克服してこられました。我が国経済を取り巻く環境は依然として不透明ではありますが、ウィズコロナへの移行も進み、景気は内需主導による緩やかな回復が続いており、本年も企業業績の回復が期待されるところです。
 日本鉄鋼業は、中長期的な動向を見据えた最適な生産体制の構築を進め、カーボンニュートラル実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)に果敢に挑戦しながら、持続可能な社会の実現のために責任ある行動を続けて参ります。



 本年については、以下の7つの課題を中心に取り組んで参ります。

1.「2050年カーボンニュートラル」実現に向けて
 鉄鋼業界は、2050年カーボンニュートラルを目指すという我が国の方針に賛同し、グリーンイノベーション基金によるご支援も頂きながら、昨年設立した水素製鉄コンソーシアムの下、革新的技術開発に鋭意取り組んでおります。
  また、鉄鋼需要家においてもサプライチェーン全体の脱炭素化に関心が高まっていることから、当連盟では、需要家のニーズに早期、かつ的確に応えるため、昨年9月、マスバランス法を適用したグリーンスチールの算定方法に関するガイドラインを策定しました。
  こうした中、昨年12月22日に、GX実行会議において「GX実現に向けた基本方針(案)」が示されました。この中で、原子力発電について、既設原発の運転期間の実質的な延長や、廃炉する原発のリプレースを前提とした革新炉の開発・建設を進めることを明確に打ち出されたことは、今後の我が国の脱炭素化の推進や高騰する電気料金の抑制に向けて、大変明るいシグナルを出して頂いたと考えます。
  また、成長志向型カーボンプライシングについては、脱炭素のための技術開発やトランジションを含めた設備投資について政府が大規模な支援をコミットした上で、これを背景に脱炭素に向かうための一定の移行期間を置き、導入時期を明らかにして段階的にカーボンプライシング施策を導入する仕組みとされ、これまでとは一線を画す政策パッケージが示されたものと考えます。
  更に、鉄鋼業に関する文脈で、@今後10年の投資に加え、それ以降も継続的な投資が必要であること、初期投資に加えオペレーションコストがかかることが明示されたこと、Aグリーンスチール製造コストを環境価値を介して市場で回収する仕組みの必要性が認識され先鞭として公共調達が明示されたこと、Bマスバランス法によるグリーンスチールの利用環境整備の必要性が明記されたことは、いずれも業界の問題意識を汲み取って頂き、政策的に後押しするというエールを頂いたものと大変心強く思います。
  日本鉄鋼業界は、既に始まっている国際的な技術開発競争を勝ち抜き、世界に先駆けて脱炭素に向かうことで、我が国の経済雇用をけん引していく決意であることを改めて申し上げます。

2.国際鉄鋼市場の安定化及び自由で公正な鉄鋼貿易の維持・発展に向けた持続的な取り組み
  鉄鋼通商では、米国の通商拡大法232条に基づく追加関税措置において、昨年4月から日本に対して無税枠が設けられ、対米貿易では一定のビジネス環境の改善が見られましたが、措置の完全撤廃には至っていないほか、EUの包括的鉄鋼セーフガード措置が延長される等、保護主義的かつ自国優先的な通商政策が継続しております。
  また、気候変動対策に係る産業界の脱炭素化の国際的な議論が進展する中、炭素国境調整措置(CBAM)をはじめとして、環境と通商が絡み合った政策の検討や貿易ルール形成の動きが顕在化しており、世界的な脱炭素化に向けた取り組みが鉄鋼製品の国際流通にも影響を及ぼし得る状況です。
  当連盟は、こうした動向を的確に捕捉して情報の分析に努めるとともに、政府が主催する二国間鉄鋼対話が定期的に開催されるよう日本政府と連携し、主要な貿易相手国との通商摩擦の未然防止を図りつつ、自由で公正な鉄鋼貿易の維持・発展を目指す取り組みを推進します。
  また、世界鉄鋼業の過剰生産能力問題は、東南アジアでの当該地域の需要を大きく上回る能力増強計画等の課題解消に向けて、多国間での政府の取り組みへの協力を継続していく所存です。

3.安全衛生活動の一層の深化
  昨年の重大災害件数は5件と、一昨年の8件からは減少しましたが、「安全は全てに優先する」との基本理念のもと、労働安全衛生を最重要課題に位置付け、“作業現場に潜む如何なるリスクも見落とすことなく、重大災害ゼロ”に向けて労働災害の未然防止に資する安全対策に関する様々な取り組みを直営・協力会社一体となって、より一層果断に推進して参る所存です。
  現場での安全作業を確保・支援するために、安全対策に関する鉄鋼業界共通の管理指針の周知・改定やリモート形式での全国大会・各分科会等の開催を通じて、階層別の安全教育や業態別・地域別での労働災害の未然防止に資する活動を間断なく遂行・展開して参ります。
  また、関係官庁および関係団体と連携をした業種横断的な取り組みへの対応や海外における先進的な取り組み事例等の会員各社へのフィードバック等を通じ、引き続き安全衛生活動の一層の水準向上を図っていきます。

4.企業の挑戦を後押しする法人課税改革への取り組み
  日本企業が厳しい国際競争を勝ち抜くためには、企業の様々な挑戦を後押しする税制の見直しが必要不可欠です。その第一として、日本鉄鋼連盟では償却資産に対する固定資産税の廃止を継続して求めて参りました。
  設備保有に対する償却資産課税は、その設備から生み出される所得に対する課税との二重課税となっている等、課税制度面での課題があり、日本の高コスト構造の一因となっております。国内の鉄鋼生産設備は、カーボンニュートラルの実現等に向けた大規模な投資が見込まれる中、本税制は大きな課題になっており、引き続き、関係各位ともご相談しつつ、取り組みを推進して参ります。
  令和5年度税制改正大綱では、防衛力強化のための財源措置として、税制措置についても一定の方向性が示されました。現下の厳しい安全保障環境等を踏まえれば、企業も社会の構成員として、一定の負担を行うことはやむを得ないと考えておりますが、結果として税制措置による負担の過半を法人税が占める方向となりました。鉄鋼業界としては、引き続きカーボンニュートラル関連を中心とした研究開発、設備投資に積極的に取り組んでいく予定ですので、政府・与党には、令和6年度改正以降での対応を含め、我々の取り組みを税制、政策面で強力かつ継続的に後押ししていただきたいと考えております。
  また、令和5年度税制改正として予定されている研究開発促進税制の拡充等については、一定の評価をしております。関係各位のご支援を賜りつつ、その活用に努めて参りたいと考えております。

5.デジタルトランスフォーメーション(DX)推進による業界共通課題の解決に向けた取り組み
 
日本経済の喫緊の課題であるデジタル化の推進、政府の進めるデジタル社会の実現に向けた取り組みと呼応し、鉄鋼業界においても一層のDX推進が図られるよう、業界共通課題の解決に向けた活動を進めて参ります。
  2020年に当連盟にAIやIoTの普及促進、DXの推進を支援する組織を立ち上げて以降、政府関係先等のご支援を得て、製鉄所でのドローンの利活用拡大、ローカル5Gの活用等を進めています。今後とも規制改革に向けた取り組み等を通じて、当業界のDX推進を強力に支援していく所存です。

6.政府一般統計の自主統計化への対応
 
日本鉄鋼連盟では、鉄鋼統計は鉄鋼業の発展を支える業界の重要な「共有資産」であるとの認識のもと、必要な統計情報が幅広く、精度高く収集・集計され、結果が広くタイムリーに共有されることが重要との思いで統計事業に取り組み続けています。
  経済産業省が長年にわたり実施してきた政府一般統計が、本年より日本鉄鋼連盟の自主統計に移管されることとなりました。関係企業への協力の呼びかけを強化するなど、円滑な移管と実施に向けて万全を期して参ります。関係事業所の皆様におかれましては、引き続き当連盟の統計調査へのご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

7.社会基盤づくり(国土強靱化等)に寄与する市場開拓活動の推進
  大規模化・激甚化する自然災害への備えとして、安全・安心が確保できる社会基盤づくりに貢献すべく、「防災・減災対策の強化」および「老朽インフラ設備・公共施設の維持・補強・更新」に寄与する鋼構造技術・工法の提案・普及活動を積極的に推進して参ります。
  また、将来の基準化・法制化を見据え、津波・液状化・長周期地震動対策や豪雨による水害対策等に資する鋼構造技術・工法の技術的課題について調査・研究に取り組むなど、今後もより積極的な活動を展開して参ります。


以上、主な課題と取り組みについて申し上げました。

 日本鉄鋼連盟は日本の社会基盤を支えるという使命を果たし続けていくという強い意志のもと、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた超革新技術の開発等の取り組みをはじめとして、諸課題に対し果敢に挑戦して参ります。関係各位のご支援、ご協力を引き続き賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

 結びに、本年もご家族共々実り多い年となりますことを心より祈念申し上げまして、年頭のご挨拶と致します。

以 上

本件に関するお問合せ先
 総務部総務・秘書・広報グループ(広報) (Tel:03-3669-4822)

 

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