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2022年 橋本会長年頭挨拶

2022年1月5日

 新年あけましておめでとうございます。年頭に当たりまして御挨拶申し上げます

 新型コロナウイルスの感染動向は、新型株の発生もあり依然として予断を許さないものがありますが、感染抑制と社会・経済活動をバランスさせつつ、日本経済が回復に向かうことを願っております。鉄鋼市場に関しては、感染状況が鎮静化すれば、半導体等の供給・物流ボトルネックが緩和に向かい、また中国政府が経済刺激政策に舵を切ることで、今年半ば頃には回復の軌道に乗ると期待しております。一方で、世界の脱炭素化への動きが加速し、脱炭素技術・資源への先行投資、化石燃料の新規開発停止等による、原料、エネルギー価格の高騰、いわゆるグリーンフレーションが懸念されます。天然資源や、再生可能エネルギーに適した立地に恵まれない日本は、いかにして不利な条件の下、欧米、中国等との産業国際競争を戦っていくか、真剣に議論をしていかなければなりません。

 こうした情勢下、日本鉄鋼業は、中・長期的な動向を見据えた最適生産体制の構築を進め、ゼロカーボン・スチールに挑戦し、安全対策の更なる徹底を図り、よりよい社会の実現のために責任ある行動を続けてまいります。 2022年は以下の5点の課題を中心に取り組みたいと存じます。

1.「2050年カーボンニュートラル」実現に向けて
  日本鉄鋼連盟は、昨年2月、「我が国の2050年カーボンニュートラルに関する日本鉄鋼業の基本方針」を策定し、ゼロカーボン・スチールに挑戦すること、カーボンニュートラル社会の構築に必要なエコプロダクトを供給すること、この両面で貢献することを表明しました。
  当業界の動きとも連動し、政府ではグリーンイノベーション(GI)基金に「製鉄プロセスにおける水素活用」プロジェクトを組み込み、今年度より当該プロジェクトが動き出す予定です。
  鉄鋼業のように技術的な選択肢がない分野での脱炭素には、極めてハードルの高い技術開発への挑戦が必要です。カーボンニュートラルに向けた技術開発において、熾烈な国家間競争が行われている中、政府においてはエネルギー政策、地球温暖化対策、産業政策が三位一体となった総合的な国家戦略の構築を強く期待します。
  具体的には、他国では我が国のグリーンイノベーション(GI)基金を大幅に上回る規模の技術開発支援や、技術開発のみならず社会実装段階まで含めた周到な支援策も講じられております。熾烈な国家間競争に勝ち抜くためには、GI基金の規模拡大や社会実装まで含めた長期継続的な広範な財政補助など、他国に勝るレベルへの支援拡充が求められます。
  また、ゼロカーボン・スチールの実現には、研究開発や設備投資のほか、オペレーションコストも含め、多額のコストがかかります。このコストアップについて、国民理解の醸成と社会全体で負担する仕組みが構築されることも必要となります。
  国際的に突出して高い我が国の産業用電気料金は、エネルギー政策上の極めて大きな問題です。第6次エネルギー基本計画の下、2030年にはFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)買取価格が現状から2兆円も拡大すること、加えて自然変動電源の導入拡大に伴い系統対策等にかかる統合コストが発生することなど、今後さらに電気料金が上昇する懸念もある中、我が国経済、雇用を守る観点から、諸外国の事例も参考に、早急に電気料金制度の抜本的な見直しを求めたいと思います。
  経済性・安定供給・環境適合のいずれの観点からも優れた電源である原子力発電については、安全性の確保を大前提に最大限活用することが不可欠と考えます。既設設備の活用はもとより、リプレース、新増設も含め、原子力の継続的活用に必要な対策や技術開発を着実に進めるべきと考えます。
  なお、炭素税や排出量取引制度は、技術開発や設備投資の原資を奪うなど、イノベーションを阻害します。カーボンニュートラルという目的に合致しない上、産業の国際競争力に甚大な影響を及ぼすものと考えます。

2.国際鉄鋼市場の安定化及び自由で公正な鉄鋼貿易の維持・発展に向けた持続的な取組み
  鉄鋼通商においては、新型コロナウイルス感染症による各国・地域の経済への影響が一進一退を繰り返す中、自国鉄鋼産業の保護を目的とした保護主義的・自国優先的な通商政策が継続しています。
  また、米国とEUにおいては、米国の通商拡大法232条に基づく追加関税措置、EUの包括的鉄鋼セーフガード措置が継続していることに加え、米・EUが主導する形で鉄鋼における非市場的な過剰生産能力および炭素排出量の削減に向けて取組むような動きが顕在化しており、今後、世界的な鉄鋼通商の国際的枠組みや多国間ルールの在り方の議論が活発化することが予想されます。
  当連盟は、最新の動きを的確に捕捉して情報分析に努め、政府が主催する二国間鉄鋼対話の定期的な開催に向けて日本政府を強力に支援するとともに、主要国・地域の鉄鋼団体との意思疎通を通じて、通商摩擦の未然防止と自由で公正な鉄鋼貿易の維持・発展を目指す取組みを推進していきます。
  国際市場の需給タイト化や中国鉄鋼業のカーボンニュートラルに向けた動き等から鉄鋼業の過剰生産能力問題を取巻く環境は変化がみられておりますが、東南アジアなどでの新たな過剰生産能力が発生することへの懸念が払拭されてはいません。
  引続きグローバル・フォーラムやOECD鉄鋼委員会など、多国間での政府の取組みに対して、可能な限りの協力を継続して実施していく所存です。

3.安全衛生活動の一層の深化
  日本鉄鋼連盟では、「安全は全てに優先する」との基本理念のもと、安全対策に関する鉄鋼業界共通の指針・マニュアル作成のほか 関連する法令等改正に関する情報の共有や新型コロナウイルスの感染リスク対応として、リモート形式での全国大会・分科会等の活動を遂行・展開するなど、現場での安全な作業、ならびに安全な作業体制を確保・支援するための諸活動に着実に取組んできました。
  また、経済産業省、厚生労働省、中央労働災害防止協会と製造業主要10事業者団体によって構成される「製造業安全対策官民協議会」については今年3月で設立から6年目を迎えますが、鉄鋼業界としての参画・関与を一層深めると共に、AI、IoT等の最新技術を活用した安全対策事例情報の収集及び共有等を通じ、貢献的な活動を継続しているほか、業種横断的に得られた知見についても、会員各社へのフィードバック等を通じ、安全衛生活動の一層の水準向上を図ってきました。
  昨年の重大災害件数は8件と、一昨年の3件から大幅な増加となっていることを深刻に受け止め、日本鉄鋼連盟では、業界共通の課題である「経験年数の浅い現場作業者」の労災未然防止のほか、労働災害分析を踏まえた傾向・対策的視点からの情報提供にも更に注力をしつつ、“重大災害撲滅”に向けて、安全な作業確保の最優先と労働災害の未然防止に向けた諸活動を直営・協力会社一体となって引き続き果断に展開してまいる所存です。

4.企業の挑戦を後押しする、法人課税改革への取り組み
  日本企業が厳しい国際競争を勝ち抜くためには、企業の様々な挑戦を後押しする、現行の法人課税改革が必要不可欠であり、その第一が償却資産に対する固定資産税の見直しです。
  設備保有に対する償却資産課税は、その設備から生み出される所得に対する課税との二重課税となっている等、課税制度面での問題があり、日本の高コスト構造の一因となっております。国内の鉄鋼生産設備は、カーボンニュートラルの実現に向け、また、デジタルトランスフォーメーション(DX)等のイノベーションを活用した大規模な投資が見込まれる中、本税制は大きな足かせになっており、引き続き、関係各位ともご相談しつつ、取り組んで参ります。
  その他、課税ベースの適正化を伴う法人に対する税負担の実質的な低減についても、グローバルな課税制度の見直しとの整合性を図りつつ、関係各位の御理解をいただきながら、国際イコールフッティングの観点からの改革を求めて参ります。

5.デジタルトランスフォーメーション(DX)推進による業界共通課題の解決に向けた取組み
 
日本経済の成長戦略の重点課題であるデジタル化の推進、政府の進めるデジタル田園都市国家構想の実現に向けた動きと呼応し、鉄鋼業界においても一層のDX推進が図られるよう、業界共通課題の解決に向けた取組みを進めて参ります。
  昨年8月には、政府関係先等のご支援を得て、製鉄所でのドローン利活用拡大に向けた規制緩和が実現致しました。これを契機に、全国各地の製鉄所において、設備保全等の幅広い分野でドローン利活用を更に推進して参ります。また、製鉄所におけるローカル5G等電波利用の規制改革に向けた取組み等を通じて、当業界のDX推進を強力に支援していく所存です。

以上、5点、主な課題と取組みについて申し上げました。

日本鉄鋼連盟は、激しく変化する時代の中新たな課題に果敢に挑み、鉄鋼製品の安定供給を通して日本の社会基盤を支えるという使命を果たし続けて参ります。関係者各位のご理解とご支援を引き続き賜りますよう、よろしくお願い致します。

以 上

本件に関するお問合せ先
 総務部総務・秘書・広報グループ(広報) (Tel:03-3669-4822)

 

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