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  一般社団法人日本鉄鋼連盟 平成29年新年賀詞交換会は、1月5日(木)正午からホテルニューオータニにおいて、世耕 弘成 経済産業大臣、塩崎 恭久 厚生労働大臣、加藤 勝信 一億総活躍担当大臣、高木 陽介 経済産業副大臣、松村 祥史 経済産業副大臣、橋本 岳 厚生労働副大臣、をご来賓にお迎えし、進藤 孝生 会長〔新日鐵住金社長〕、柿木 厚司 副会長〔JFEスチール社長〕、川崎 博也 副会長〔神戸製鋼所会長兼社長〕、戸出 巌 副会長〔メタルワン社長執行役員兼CEO〕、松浦 康夫 副会長〔伊藤忠丸紅鉄鋼社長〕が出席して開催され、約1,700名の参加を得て盛況裡に閉会しました。

平成29年新年賀詞交換会 進藤会長年頭挨拶

 新年、明けましておめでとうございます。
 本日はまことにご多忙の中、日本鉄鋼連盟の賀詞交換会に多数のご臨席を賜りありがとうございます。

 年頭にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。

 昨年の経済環境を振り返りますと、日本経済は、個人消費には十分な力強さは見られなかったものの、生産・輸出等の指標は底堅く推移し、緩やかながら回復基調を辿りました。世界経済も、原油価格低迷や中国の成長鈍化などの不安材料もみられたものの、米国・欧州経済は緩やかな回復が継続し、中国経済も政府の景気対策に下支えされ、全体としては底堅く推移しました。

 こうした中、我が国の鉄鋼内需は、堅調な自動車産業や、再開発案件の始動を背景とした建設分野における需要を牽引役に、年後半から着実に回復への動きを強めました。一方、過剰生産能力を背景に、中国製をはじめとする安価な鋼材が世界の鉄鋼マーケットに大量に流入し、世界各国・地域でアンチダンピング等の輸入制限措置が多発することとなりました。加えて、夏以降、原料炭価格の急騰により高炉各社の原料調達コストが大幅に上昇する等、我が国鉄鋼業にとっては大変厳しい1年となりました。

 こうした情勢も踏まえ、2017年における鉄鋼業界の課題認識と主な取り組みについて、5点申し上げます。

 第一の課題は、安全対策の更なる推進です。
昨年、鉄鋼業において、年初から連続して重大労働災害が発生したことは痛恨の極みです。こうした事態を受けて、経済産業省ならびに厚生労働省からは改善に向けた要請が発出されました。鉄鋼連盟としてはこれらを大変重く受け止め、業界として「労働災害防止緊急対策」を速やかに策定し、自主点検結果に基づいた重大災害の原因分析に注力するとともに、労働災害の未然防止に向けた取り組みを間断なく推進してまいりました。本年も業界全体の安全水準の一層の向上を最優先の課題として取り組んでまいります。

 第二の課題は、世界鉄鋼業の安定的発展に向けた取り組みについてです。
本件については、2つの項目があります。一つ目は鉄鋼業の過剰生産能力問題への対応、二つ目は自由で公正な鉄鋼貿易の維持・発展に向けた対応です。

 まず、鉄鋼業の過剰生産能力問題への対応についてです。
OECDによると、2016年、世界の過剰鉄鋼生産能力は粗鋼ベースで8億トンを突破しました。特に、政府等による市場歪曲的な公的支援が、非効率な生産設備を存続させたり、経済合理性に乏しい新規能力拡張プロジェクトを進展させたりし、能力過剰を助長する要因となっています。こうした中、この過剰生産能力問題が昨年のG7やG20の場で相次いで取り上げられて世界的な課題として各国政府に認識され、その対応のため、世界の主要製鉄国・地域の政府関係者によるグローバル・フォーラムが設置され、第1回会合が昨年末に開催されたことは大きな前進です。ここまでの日本政府のご尽力に改めて感謝申し上げます。当連盟としても、このグローバル・フォーラムにおける多国間の取り組みへの協力に加え、特に過剰生産能力の大きい中国の政府や業界関係者に対し、日本鉄鋼業の過去の構造調整の経験を説明する等、過剰生産能力の早期の解消に向けて、最大限の協力を惜しまない所存です。

 二つ目は、WTOルールに基づく自由で公正な鉄鋼貿易の維持・発展に向けた対応についてです。
先に申し述べた通り、世界各国・地域でアンチダンピングやセーフガード措置等の通商摩擦が激化しており、残念ながらこれらにわが国が巻き込まれるケースも発生しています。当連盟としては、競争法等に照らしたコンプライアンスを十分確保した上で、引き続き政府主催による二国間鉄鋼対話等を通じ、主要国・地域の鉄鋼関係者との相互理解の促進と信頼関係の強化を図り、問題の早期解決と健全な自由貿易の確立に向けた取り組みを推進してまいります。加えて、我が国の鋼材輸入についても、従来以上に頻度を上げてモニタリングを実施してまいります。その上で、相手国による不公正な貿易行為が認められる場合には、貿易救済措置を求めるべく、適切な対応を図っていく所存です。
なお、米国のトランプ次期大統領が既に表明しているTPPからの離脱に加え、NAFTAの見直し等、今後、世界が保護貿易主義的な動きに傾倒していくこととなれば、我が国鉄鋼業にも多大な影響が及ぶものと考えており、引き続き米国はじめ各国の政策動向を注視してまいります。

 第三の課題は、地球温暖化対策とエネルギー問題への対応です。
地球温暖化対策の新たな国際枠組みである「パリ協定」が昨年11月に発効しました。今後の具体的なルール作りの場において、日本政府から世界に向け、我が国の省エネ技術や、優れた低炭素製品の提供といった技術面の強みを軸に、日本ならではの貢献のあり方がさらに発信されることを期待したいと思います。鉄鋼業としても、「低炭素社会実行計画」に基づき、「エコプロセス」、「エコプロダクト」、「エコソリューション」の3つのエコと「革新的技術開発」の4本柱を基本コンセプトに、地球温暖化対策に確実に貢献していく所存です。
また、近隣諸国に比べて高い電気料金の問題は、イコールフッティングを妨げる最重要課題の一つと認識しております。企業の国際競争力の維持・向上のために、安全性の確認された原発の再稼働等も通じて、低廉かつ安定的なエネルギー供給を実現頂くことが大変重要となってきます。政府をはじめ関係する皆様の一層のリーダーシップ発揮をお願い致します。

 第四の課題は、税制面でのイコールフッティングの実現であります。
平成28年度の税制改正における法人実効税率の30%を切る水準への引下げに続き、平成29年度には研究開発促進税制の見直し等、企業活動の活性化に配慮した改正を実現して頂いたことに関し、政府関係者の皆様には感謝申し上げます。引き続き、企業の税負担の実質軽減に向けた実効税率のさらなる引下げや積極的な国内投資に資する償却資産に対する固定資産税廃止の検討等、国際的なイコールフッティングを実現する政策の推進をお願いいたします。

 そして第五の課題は、政府が強力に推進している「働き方改革」であります。
「働き方改革」がアベノミクスの経済運営の流れの中で重要な位置づけにあるとの認識の下、鉄鋼業界としてもこれを重要な課題として受け止め、各企業とも長時間労働の改善、女性・高齢者の活躍促進、ワーク・ライフ・バランスなどといった各テーマに引き続き真剣に取り組んでまいります。
一方、長時間労働の一律的制限や同一労働同一賃金の導入等の課題では、各業界特有の労働・雇用環境や我が国の雇用慣行にも十分留意した慎重な議論をお願いしたいと思います。

 2017年、世界経済は依然多くの不確実性を抱えており、鉄鋼業においても原料炭の高騰等、引き続き厳しい環境下にありますが、鉄鋼マーケットは着実に回復基調を維持する等、明るい兆しも見えております。
日本鉄鋼連盟としては、関係各位のご理解とご支援を賜りながら、以上申し上げた5つの重点分野を中心とする諸課題に取り組んでまいります。この場をお借りしまして、改めて皆さま方の引き続きのご指導とご鞭撻をお願い申し上げます。
結びにあたり、本日お集まりの皆様、また関係各位にとりまして、本年が有意義で実りの多い年となりますことを心より祈念致しまして、私の挨拶とさせて頂きます。

 

  

  進藤会長                                    戸出副会長

 

  

  世耕経済産業大臣                               塩崎厚生労働大臣


   

  加藤一億総活躍担当大臣                           

 

 

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