「日本鉄鋼業のエネルギー効率」について

●先頃、日本鉄鋼業のエネルギー効率（生産量当たりのエネルギー消費）が「英、独、仏に既に抜かれ・・・」との一部報道がありました。

報道の根拠となったのは、ＩＥＡエネルギーの統計（２００４年）でしたが、このデータでは、鉄鋼生産の基本プロセスであるコークス製造や、付帯プロセスで ある発電部門が、鉄鋼生産プロセスから分離されており、この統計のみでは日本鉄鋼業がこれまで推進してきた、コークス製造中に発生する副生ガスや、排熱回 収による発電等、エネルギーの有効利用ないし省エネルギーを正しく評価しておりません。

この点については、ＩＥＡ自身も論文（出典：Tracking Industrial Energy Efficiency and CO2 Emissions, IEA 2007） の中で本統計利用に関する注意を喚起しています。

＊［参考］：以下、ＩＥＡ原文

「In the IEA statistics, coke ovens, blast furnaces and other energy uses in the iron and steel industry are reported separately. Yet, analysis reveals that this data submitted from national sources need to be improved. For example, in some cases　energy used to produce iron and steel is allocated and reported in the “other industry” category, which results in an under-estimation; or the use of energy by-products for power generation is improperly allocated to the iron and steel　sector.」

「生産量あたりのエネルギー消費、つまりエネルギー効率につきましては、国や統計によって集計対象範囲が異なる」ことから、私どもは、これまでも産業構造審議会・中央環境審議会合同会合の場で、先ず同一の定義による国際比較が必要であることを指摘してまいりました。

わが国鉄鋼業のエネルギー効率が世界一であることは、米・中・印・日等、７カ国の官・民が集う「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ（ＡＰＰ）」や、英・独・仏をはじめ世界の主な鉄鋼メーカーが集う国際鉄鋼協会（ＩＩＳＩ）等、国際組織においても、共通認識として既に広く認められているところであり､また、（財）地球環境産業技術研究機構（ＲＩＴＥ）の論文等でも、定量的に裏付けられております。

●報道されて以降、私どもに対して各方面から数多くの確認の問い合わせが寄せられましたが、これもエネルギー効率が各国の省エネルギーの実力評価や地球温暖化対策検討の大前提として、如何に関心が深いか､そして如何に重要であるかということの証左に他なりません。この認識に立って､私どもは上述のＡＰＰやＩＩＳＩにおいて､各国の鉄鋼メーカーとともに「世界共通の定義によるエネルギー効率の国際比較」を行うべく､懸命に取組んでいるところであります。

また、日本鉄鋼業としては、環境･省エネルギー技術を開示することはもとより、専門家を現地の工場に派遣して、環境・エネルギー診断を行う等､国際技術移転のための協力活動を積極的に展開しております。これは、現在、中国やインドから、わが国鉄鋼業の有するトップランナーの環境・省エネルギー技術のデータ情報､さらには具体的な省エネルギー設備の提供に関する強い要請に基づくものです。

●７月の洞爺湖サミットを目前に控え､ポスト京都の枠組み作りにおいて､地球温暖化対策として真に効果的な施策を議長国である日本が各国とともに確立できるか否か､極めて重要な時期を迎えております。

折しも先のダボス会議において、福田総理は、セクター別のエネルギー効率比較を踏まえて積み上げた数値目標を打ち立てることを提唱されましたが、そのためには､各国ごとのエネルギー効率のレベルを正しく評価し、世界共通の認識に基づいて各国が協力し合う体制を作り上げることこそが、最も基本かつ大切であります。

●つきましては、皆様方のご理解を一層深めていただくためにも、「日本鉄鋼業のエネルギー効率」に関する基本的な考え方を別添のとおりとりまとめましたので、ご参考にして頂ければ幸甚です。

なお、ご疑問やご不明の点がございましたら､日本鉄鋼業界と致しましては、適切な情報提供、ご回答を申し上げたく、いつでもご質問をお寄せ戴きたいと存じます。

「日本鉄鋼業のエネルギー効率」について(PDF)

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