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会長コメント

「『革新的エネルギー・環境戦略』の決定について」

2012年9月18日
一般社団法人日本鉄鋼連盟
会長 友野 宏

 この度、政府は「革新的エネルギー・環境戦略」について、「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入す
る」とし、「原発ゼロとする方針」を決定しました。

 私共はこれまで、「エネルギー・環境に関する選択肢」については、「雇用」と「国民の生活」を守るため、原子力発電を中長期的に一定程度維持する「20〜25シナリオ」をベースに、省エネルギー及び再生可能エネルギーに関する非現実的な前提条件を現実的なものに見直すことを主張してまいりましたが、今回の決定においては、全く取り入れられませんでした。
 また政府は、「原発ゼロとする場合の課題」として、電力需給逼迫、電気料金上昇など国民負担の増大(Economy)や、調達リスクを含むエネルギー安全保障の弱体化(Energy Security)、地球温暖化問題への逆行(Environmental Protection)、更には原子力・エネルギー政策上の日米関係や青森県を始めとした原子力関連施設立地地域との関係等、多くの課題があるにもかかわらず、国民に対してこれらの課題に対する具体的かつ実行可能な解決策を何ら示しておりません。
 係る重要な課題が山積するにも関わらず、性急に「原発ゼロとする方針」が決められたことについては、誠に遺憾であります。

 これまでと同様「ものづくり産業」が将来に亘って、我が国の「雇用」と「国民の生活」を支えるためには、低廉且つ安定的なエネルギーや電力の供給が不可欠です。ただでさえ、歴史的な円高の継続などの多重苦に直面する中で、あらゆる経済活動の基盤であるエネルギー問題に綻びが生じれば、国内での生産活動の維持は極めて困難なものとなります。
 原子力ゼロとなれば、電力料金は最大で2倍以上となり、これによる製造業全体の負担額は3兆円を超えます。これは製造業の年間法人税額(2010年度約3兆円)が2倍になることと同等の打撃となります。例えば、電力多消費産業である電炉業においては経常利益の約3倍の負担増となり、こうなれば事業存続は全く不可能となり、電炉業に従事する2万人超の従業員は職を失い、その家族も含めれば、約5万人もの生活が失われることになります。

 政府におかれては、原発をゼロとする場合に不可避的に生ずるこれら修復不可能な課題を国民にきちんと説明し、本方針の即刻撤回と、事実に基づく冷静な議論を通じた、現実的かつ責任ある判断を今一度強く求めます。

以上

本件に関するご連絡/お問合せ先:
一般社団法人 日本鉄鋼連盟総務本部 広報グループ  TEL:03-3669-4822

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