鉄鋼EDI導入ガイド 目次
はじめに
(参考)鉄鋼EDI標準(T)(U)の構成
(参考)鉄鋼EDI標準導入に際しての作業内容と
本導入ガイドとの関連
1.構築スケジュール立案
2.CII標準企業コードの登録
3.標準メッセージの選択とデータ項目決定
4.相手先とのシステム環境確認
5.導入スケジュール確認
6.前提ハード・ソフトの確認
7.通信回線の手配
8.アプリケーションシステムの見直し並びに構築
9.運用ルールの確認
10.CIIトランスレータの導入
11.通信ソフト(全銀協手順)の導入
12.疎通テスト
13.連動テスト
14.実データテスト
15.オンライン取引契約書の作成・締結
付録1 接続環境確認書@・・・相手先接続確認書
付録2 接続環境確認書A・・・連絡先
付録3 運用確認書@ ・・・連絡先
付録4 運用確認書A ・・・運用スケジュール確認
付録5 スケジュール確認書
付録6 メッセージ確認書
本鉄鋼EDIセンターが、「EDI(電子データ交換:Electronic Data Interchange)」を採り上げ鋼材取引のEDI化について研究を進めた背景としては、欧米における商取引のEDI化の進展とEDIのための国際標準整備の動き、物流近代化という社会的要請に対する改善手段としてのEDIへの期待、更に産業界の情報化の進展に伴い鉄鋼需要業界からの様々な情報の伝送化を要請されたこと等があげられる。
EDIとは、企業間の情報のやりとりの新しい手段であり、情報の電子データ化により、
@ビジネス・スピードの向上
A業務・情報の精度の向上
B作業効率の向上・省力化
Cペーパーレス化
をもたらし、現在では、企業活動の合理化・効率化のための要件となりつつある。また、EDIは、企業間のデータ交換であることから、当事者双方にとって平等で公正を原則としたパートナーシップの確立とEDI化の実施に向けて、各社の情報化投資を如何に効率的に進めるかも重要なポイントとなっている。
一方、鉄鋼業界における鋼材取引情報は、鉄鋼メーカー・商社・加工センター・倉庫・中継地・最終需要家間という「広い範囲」と製品の多様性という「深い奥行き」の中で膨大な量が交換されているがこの鋼材取引情報のEDI化を進めるには充分な準備が必要となる。
本内容は、鉄鋼EDI標準の実施に当たって、EDI導入作業内容並びに各社で準備するハードウエア・ソフトウエア等について解説したものであり、付録として接続環境・運用・スケジュールの確認書等を添付している。
本書は、本センターの鉄鋼EDI導入についての基本的考え方・ガイドラインを示したもので、利用に当たっては、関係当事者間で充分に協議・決定し、早期EDIの実現を図っていただきたい。
一般社団法人 日本鉄鋼連盟
鉄鋼EDIセンター
鉄鋼EDI標準(T)(U)における各章の位置づけ鉄鋼EDI標準(T)
範囲の方々に鉄鋼EDI標準の概略を説明したもの。
総則:鉄鋼EDIを実施する上で、種々の情報に共通して必要な規則・取決め事項を示したもの(参考となる事例も付記)。
細則:総則で定める共通規則の下で情報毎に個別に定めるデータ交換規則、及び標準メッセージを取決めたもの。
補足資料:EDIに関する取引基本契約書の作成事例、鉄鋼EDI標準で使用している用語・略語の解説を取りまとめたもの。
鉄鋼EDI標準 (U)
データ項目辞書:標準メッセージで使用されるデータ項目を定義したもの。
コード・項目解説書:データ項目に適用されるコード・項目の詳細内容を解説したもの。
[注] 鉄鋼EDI標準に基づきデータ交換を行うためのハード・ソフト両面の実務的な導入解説書(手引書)として、本書を作成している。
(参考)鉄鋼EDI標準導入に際しての作業内容と本導入ガイドとの関連
鉄鋼EDI標準でのデータ伝送は、社内の独自データをトランスレータで標準メッセージに変換し通信ソフトで回線を通じて相手側のVANのメールボックスに発信します。発信側は、VANから標準メッセージを回線を通じて受信しトランスレーターで社内の独自データに変換して業務システムに適用します。これらの各システムを構築する場合に、ソフト、ハード、回線等の準備が必要であり、本導入ガイドとの関連は以下のとおりです。
鉄鋼EDI導入ガイド
EDIの実施については、企画から本番稼動までに、多数の作業項目があり、長時間を要します。
従って、これらの作業についてのガイドとして、スケジュールも含めて以降の手順を参考に、早期本番稼動を実施して下さい。
なお、作業手順は、一般的なものであり、あくまでも参考です。
(1)CII標準企業コードの登録
鉄鋼EDI標準への参加企業は、CII(産業情報化推進センター)が発番管理する「標準企業コード」を用いなければなりませんので、同コードを登録して下さい。
鉄鋼業界では、EDIの展開にあたってCII標準企業コードを各企業に広く普及・利用していただくために、『日本鉄鋼連盟』の鉄鋼EDIセンター内で、コードの発番管理を行っています。なお所属する業界団体に業界コードセンターがない場合には、直接CIIへ申し込んで、標準企業コードを取得して下さい。
(2)CII標準企業コードの概要
CII標準企業コードは、国内において、EDIに参加している多数の企業の中から、企業をユニークに識別できるようにコード化された文字列であり、基本部である「企業識別コード(6桁)」と拡張部である「部門識別コード(6桁)」とで構成されています(図−1参照)。
企業識別コードは、国内において1つの企業をユニークに識別する機能を持ち、部門識別コードは企業識別コードによってユニークに識別された企業の内部組織を識別するもので、その発番管理は各企業内で行うこととなりますので、体系だてて運用して下さい。
□ C1〜C6は、固定6桁で、企業識別コードを表し、省略は許されません。
□ D1〜D6は、最小0桁(省略可)、最大6桁で、部門識別コードを表します。
□ C1〜C2は、特別な識別子であり、コードセンターを識別します。
□ 使用文字は、0〜9の数値とアルファベット(IとOを除く24文字)です。
但し、当分の間は、数字のみのコードを使用します。
(3)CII標準企業コードの管理と運用
CIIによる管理・運用形態は、標準企業コードのユニーク性を維持するために、「企業識別コード」の部分を同センターへ登録します。また、登録管理の窓口が複数になってもユニーク性を維持できるように、同センターと業界コードセンター(端末延長)とで、『標準企業コード管理システム』を使用することになります。標準企業コードの登録料は、有料で3年間有効ですが、3年後に更新が必要となります。一度登録されたコードは、更新をしても変わりませんが、3年に1度の更新がされなかった場合、登録されたコードは自動的に抹消されることになっています。
(1)内容
EDIの実施予定の標準メッセージとその中で実際に運用を行うデータ項目を、当事者間で決定します。
@ 標準メッセージの種類の選択
「鉄鋼EDI標準(T)(V.細則)」の各「標準メッセージの種類と定義」から相互に運用する情報を選択します。
A 各標準メッセージのデータ項目の決定
「メッセージ確認書(付録6参照)」により下記の点について、検討します。
ア.鉄鋼EDI標準のデータ項目に対応する社内項目名称を確認
イ.受発信に関するキー項目データの運用
ウ.受発信可能な項目の確認(必須、任意)
エ.受発信項目の桁数及び繰返し数の確認
オ.項目内容についての確認(独自コード)
カ.その他(自由欄の使用有無確認等)
(2)確認書の活用方法
確認内容を当事者で保管し、項目内容の改廃が生じた場合は、必ず当事者で協議する。
(1)内容
受発信メッセージが、お互いに伝送可能であるかどうか又はどのようハード・ソフトの導入が必要かを確認します。
(2)方法
@ 双方のコンピュータ(メーカー、機種)のソフト(OS、トランスレータ、通信ソフト)、回線(回線の種類、VAN)の内容について、接続環境確認書(付録1〜付録2参照)で確認します。
A 通信は全銀協手順を標準として確認書を作成しており、当事者間の協議の結果、全銀協手順以外を使用する場合には、各社独自に接続確認書(付録1〜付録2参照)と同等の内容で相手先と確認が必要です。
(1)内容
当事者双方にとって、早期本番化を実施するためにスケジュール調整を行います。
(2)方法
標準メッセージの種類と運用する項目、システム環境を確認した内容について、いつどのような手順で実施していくかについて、本番稼働に向けたスケジュールを「スケジュール確認書(付録5参照)」で確認します。
(1)内容
相手先とのシステム環境確認に基づいた社内環境設定を行います。
(2)方法
接続形態が決定したら、それに必要なハードウェア・ソフトウェアを次の手順で確認して下さい。
@ 自社で保有するハード・ソフトの有無確認。
A 保有するハード・ソフトの利用可否確認。
B 不足しているハード・ソフトの手配。
以上の@ABについて、必要があれば、コンピュータメーカー・情報サービス会社等の営業・SEに確認の上、ハード・ソフトの手配をして下さい。
なお、各ソフトウェア製品の選定と稼働する環境確認が必要です。また、導入に当たって、基本ソフトウェアのバージョンや前提ソフトウェアの有無なども確認する必要があります。
(1)内容
相手先とのシステム環境の確認に基づいた回線と通信機器の敷設を行います(図−2参照)。
(2)方法
回線の敷設は、一般的に準備工期が約3カ月かかります。また、必要に応じて配線の工事が発生します。従って、なるべく早めに通信業者に相談し、敷設完了時期を確認して下さい。
@ 回線の種類に応じた回線の空があるかどうか確認。
・通信業者から建物まで
・建物の入口からコンピュータまで
(利用可能な回線の種類)公衆回線、専用回線、DDX−C、INS64
A 配線工事の有無確認と工事。
B 回線の申請を電気通信業者に行う。
C VANに接続するときは、VAN業者に加入手続きを行う。
(1)内容
従来の帳票ベース(郵送、電話、FAX等)での人手による情報交換からコンピュータ間での情報交換に変わり、情報処理の効率化メリットを実現するためにアプリケーションシステムの見直し並びに構築を行います。
(2)方法
各社各様の業務処理方法がありますが、基本的には受発信の際に下記の処理を決定し、システムの見直し並びに構築を行い、その業務処理マニュアル等を作成後、関連部署の承認を得る必要があります。
受 信 の 際
発 信 の 際
oどこがデータを受信し
oどこへ通知し
o各部署でどの様な処理をするか等を
o各部署でどのように処理して
oどのように集約し
oどこへデータを発信するか等を
(1)内容
EDIの実施に伴って、通常の運用方法に加えて、トラブル発生の防止あるいは発生時の処置についてのルール確認をします。
(2)具体的確認事項
「鉄鋼EDI標準(T)(U.総則:4.EDI運用に関する取決め事項)」に基づいて当事者間で協議・決定します。(付録3・4参照)
@ 標準企業コードの登録(詳細は、2.CII標準企業コードの登録参照)。
A CIIシンタックス・ルールの厳守
B 伝送授受の確認方法
具体例として、以下のような方法があります。
・トータルチェックの確認・・・受信者
・受信確認メッセージを用いた確認(VANの蓄積交換の時に必要かどうか)・・・発信者
・ゼロ件データによる確認(不特定多数の企業間でのデータ発生頻度を考慮)・・・受信者C 責任分界点
発信者、受信者およびVAN業者それぞれが、データのやり取りについて責任を負う範囲の境界が責任分界点です。
D 障害発生時の窓口および代替方法
E 運用スケジュール(データ交換日・運用時間帯等)
F データ保存期間(受発信者の保存期間)
発信者、受信者ともに、やりとりしたデータをどれぐらいの期間保存しておくのかを取決めておきます。
G 費用負担(初期コスト・ランニングコスト等)
H セキュリティ(安全対策・高信頼性対策・機密保護対策等)
(1)内容
発信元の固定長データからCIIシンタックス・ルールによる標準フォーマットの作成又は、同フォーマットから受信先の固定長データへ変換するトランスレータ(ソフト)を導入します。
(2)方法
@ コンピュータメーカー・情報サービス会社等の営業・SEに確認の上、メーカー・機種に対応したトランスレータ(CIIの推奨が必要)を購入します。
なお、CIIでは、トタンスレータのモデル仕様を決めており、コンピュータメーカー・情報サービス会社等がトランスレータを試作すると、検証・接続テストを行い、一定の基準をクリアした場合に、推奨マークを付与しています。
A ソフトをコンピュータに導入します(インストール)。
B 独自フォーマットデータから標準フォーマットデータを作成したり、標準フォーマットデータから独自フォーマットデータを作成するためには、標準メッセージ・項目の確認結果に基づき、SMテーブル(標準メッセージ テーブル)を定義しますが、メーカー・機種によって、トランスレータの仕様が異なるため、各々のマニュアルを参照して下さい。
(1)内容
相手先とのシステム環境確認に基づいた通信ソフトを購入します。
(2)方法
@ コンピュータメーカー・情報サービス会社等の営業・SEに相談し、自社のコンピュータのメーカー・機種に対応した通信ソフトを購入します。
A ソフトをコンピュータに導入します(インストール)。
B メーカー・機種によって通信ソフトの仕様が異なるために、通常の運用ルール並びに相手先との接続環境を踏まえ、相手先の環境に整合性のとれたパラメータを設定します。
(設定内容例)通信の起動方法、回線ビジーリトライ、障害時リトライ、データ圧縮機能 照会モード、二重送信、通信回線番号等
(1)内容
相手先に対して回線および通信ソフトウェアのレベルでの設定がうまく完了していることを確認します(図−3参照)。
(2)方法
@ 通信機器間の疎通
DDX−C、公衆回線、INS64は、ダイヤルすることにより相手先と確認します。
A 通信ソフト間で、テスト用のデータが発信・受信できることを確認します。
ア.通信ソフトのパラメータが正しいか確認します。
イ.自動ダイヤルの場合は、自動発信(TA、NCU等)が可能か確認します。
ウ.相手先との情報交換に必要な登録事項の内容を確認します。
エ.テストデータの折り返しテスト。
発信データ(英字 数字 特殊記号 カナ(大小)等)を相手先に発信し、またそのデータを相手先から受信し内容が正しいかどうか確認します。
(1)内容
発信者から受信者に発信タイプ(1メッセージ、一括)のテストデータを作成し、トランスレータから通信のレベルまでの連動した受発信ができる事を確認します(図−3参照)。
(2)方法
@ テストデータをどの様に作成するかあらかじめ確認します。
また、実データをテストデータとしてもよいが、テスト用データで各種チェックを行うのが望ましい。
A 発信側
自社の独自フォーマットデータからトランスレータを通して、CII標準フォーマットデータの発信するまでの処理が連動して行われるかを確認します。
B 受信側
ア.テストデータの受信からトランスレータを通して自社の独自フォーマットデータに変換し、業務処理に連動するかどうかを確認します。
イ.テストデータの内容(メッセージ内容以外)が正しいかを確認します。
ウ.相互のトランスレータ変換テーブルの定義が整合しているかを確認します。
(1)内容
EDIの対象となるすべてのメッセージを、本番のデータで作成し受発信のテストを行い、受信先の業務処理にうまく適合できるか確認します(図−3参照)。
(2)方法
@ 発信側
EDI対象の全メッセージについて、本番用の実データにテストフラッグを立てて発信します(メッセージグループヘッダーの運用モードにX'31'をセット)。
受信側とテストモードでなく、運用モードでテストするという確認を取れば、運用モードでも可能です。
A 受信側
受信した実データを、テストとして業務処理に利用し内容がうまく適合できるか確認します。
(3)確認すべき内容
o前以って取り交わした内容について確認します。
oメッセージ・グループ・ヘッダー(図−4を参照)。
oメッセージ・グループ・トレーラ
oデータ項目
所属VANコード …… 発信者・受信者が接続するVANの標準企業コード
(VAN利用の時のみ必要)発信・受信センターコード …… 発信者・受信者の標準企業コード
発信者・受信者コード …… 発信者・受信者の標準企業コード
BPID …… 使用するビジネスプロトコルを識別するコード
情報区分コード …… 伝送を行う情報(帳票)の種類を表すコード
(1)内容
企業間のEDIにおいては、何らかの事件や障害の発生により、正常なデータ交換が出来なくなることによって双方の業務処理に支障をきたす恐れがあり、このことが原因で企業間のトラブルに発展する可能性があります。
これらを未然に防ぐ又は発生した場合の対応について、企業間双方で「オンライン取引契約書」を締結することが望ましい。
(2)方法
運用ルールの確認内容に基づいて「オンライン取引契約書」を作成し、当事者間で内容を協議・決定し、実データテスト終了後、本番稼働までに、契約の締結を行います。
(3)オンライン取引契約書の内容
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||同契約書の具体的な内容例は、「鉄鋼EDI標準(2001年版)」の「W.補足資料」を参照して下さい。