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平成20年新年賀詞交換会

(社)日本鉄鋼連盟 平成20年新年賀詞交換会は、1月7日(月)正午からホテルニューオータニにおいて、荻原健司経済産業大臣政務官、並木正芳環境大臣政務官をご来賓にお迎えし、馬田一会長〔JFEスチール社長〕、三村明夫副会長〔新日本製鐵社長〕、友野宏副会長〔住友金属工業社長〕、犬伏泰夫副会長〔神戸製鋼所社長〕、多田博副会長〔三井物産副社長執行役員〕、金田守司副会長〔メタルワン社長〕はじめ約1,800名の参加を得て盛況裡に開催された。

平成20年新年賀詞交換会 馬田会長年頭挨拶

明けましておめでとうございます。皆様には、穏やかに新年を迎えられたことと存じます。 本日は大変お忙しい中、日本鉄鋼連盟の新年賀詞交換会にご出席頂き、誠に有り難うございます。2008年の年頭にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。

昨年を振り返りますと、我が国の鉄鋼需要は、造船、自動車、産業機械を中心に製造業が極めて好調であり、総じて力強 く推移いたしました。海外に目を向けましても、アジアを中心とした需要が、依然旺盛であり、2007年度の我が国粗鋼生産量は、昨年度を上回り、過去最高 レベルに達することが見込まれます。

昨年の我が国経済は、緩やかながら民間主導による成長を遂げてまいりました。一方で、建築基準法の改正による建設着 工の大幅な遅れにより、鉄鋼業界はもとより広く建築関係業種へ影響が及ぶ等、問題が長期化すれば、経済の減速が懸念されます。国土交通省をはじめ関係省庁 におかれまして、早急な運用の改善を更に進めて頂けるよう、引き続きお願いしたいと思います。

国際的には、米国のサブプライムローン問題に端を発する金融面の混乱が不安材料となり、米国経済の減速が懸念されます。実体経済へのダメージを防ぐべく、各国の金融政策、経済政策当局の迅速かつ的確な対応を期待したいと思います。

この他、原油価格の急騰等、懸念材料が一部にはありますが、高成長を維持している東アジア諸国やBRICsの牽引もあり、世界経済は、本年も引き続き概ね堅調に推移し、鋼材需要につきましても、依然、高水準に推移するものと予想されます。

昨年この場で、中国鉄鋼業の過剰能力問題について申し上 げました。2007年の中国の粗鋼生産量は5億トンに迫り、また、鋼材輸出量は6千万トンを大幅に超えるものと見込まれます。その量は、依然として極めて 高水準にあり、事実、欧州、米国との貿易摩擦が表面化しており、中国の生産、輸出動向については引き続き注視していく必要があると認識しております。

一方、昨年7月以降、中国の鋼材輸出量は減少傾向にあり、中国政府による一連の輸出抑制策の効果が表れてきたものと考えられます。今後ともこの傾向が継続されるとともに、「鉄鋼産業発展政策」が着実に前進していくことを期待します。

政府における主要各国との所謂EPA締結交渉に関しましては、昨年8月にアセアンとの大筋合意がなされ、11月には タイとの協定が発効するなどの進展が見られ、経済産業省を始めとする関係各位のご尽力に改めて御礼を申し上げますとともに、日本鉄鋼連盟といたしまして も、全面的に協力してまいります。

また、世界の鉄鋼業界には構造変化の様々な動きが見られます。各社がそれぞれの戦略に基づいて対応していくべき課題 ではありますが、我が国製造業の特質とも言える産業間の連携を強化し、また、地域や従業員との良き関係を維持、向上させるという視点を持って企業価値の向 上を図ることが対応の基本であると考えます。

次に、我が国鉄鋼業が直面するふたつの課題について申し上げます。

第一に国際的な資源価格の高騰であります。

ご承知の通り、鉄鉱石、原料炭のみならず、非鉄金属、スクラッ プを含めた鉄鋼原料、更にはフレートに至るまで、その高騰はとどまるところを知らない状況であります。鉄鋼業界としては、物流や生産プロセスにおける効率 化等、懸命なるコスト削減に努めていますが、それをはるかに上回る規模となっています。2007年度のコスト上昇に関しましては、現状の試算では、業界全 体で、2006年度比約9千億円、2003年度からの累計では約3兆6千億円にものぼる見込みであり、極めて憂慮すべき事態であります。

昨年11月のBHPビリトンのリオ・ティントへの買収提案については、日本鉄鋼連盟をはじめ国際鉄鋼協会も反対を表 明しているところでございます。グローバル競争の渦中にある鉄鋼業界として、国際的に公正な競争環境が維持、促進されるよう、関係当局のご尽力もお願いし てまいる所存です。

第二に、地球環境問題について申し上げます。

いよいよ京都議定書 の第1約束期間の初年度を迎えます。過去25年間で、我が国鉄鋼業における省エネルギー、および環境関連への投資額は、累計で約4兆5千億円にものぼり、 今日、我が国鉄鋼業は世界で最も優れたエネルギー効率を実現しています。その上で、更に大幅な改善を目指す鉄鋼連盟の自主行動計画は、極めて大きな挑戦で あります。

しかし、我々は、目標の完遂を目指して、技術を軸としたエネルギー消費量の削減に鋭意取り組んでまいります。

合わせて、生産プロセスにおけるCO2排出削減のみならず、自動車、船舶の軽量化や、変圧器等のエネルギー効率向上に寄与する鉄鋼製品の提供をもって、一層の排出削減を実現してまいります。

また、「ポスト京都」における国際的枠組の構築に関し、引き続き、鉄鋼連盟として精力的に意見発信してまいります。

実効ある排出量削減のためには、米国、中国、インド等の主要排 出国の国際的枠組みへの参加が不可欠であります。そのためにも、産業別にエネルギー効率を基にした、衡平かつ合理的な目標設定がなされるべきであり、国際 鉄鋼協会においては独自のセクトラルアプローチの採用を決定しました。また、バリ島でのCOP13におきましても、セクトラルアプローチが今後の検討とし て取り上げられるなど、実効ある枠組みとしての評価が高まりつつあります。そして、先進国は優れた省エネルギー技術を移転するとともに、長期的視野に立っ て革新的な技術開発を推進することが真に実効あるCO2排出削減への道であると確信しています。

なお、「Cap & Trade」につきましては、「Trade」の前提となる「Cap」を合理的かつ衡平に決めることは、現実的に不可能であり、科学的でない不衡平な 「Cap」をもとにした「Trade」は、炭素リーケージを招くなど、本来の目的であるCO2排出削減に寄与するとは考えられません。

日本鉄鋼連盟は、これまでも「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」所謂「APP」の鉄鋼タス クフォースや国際鉄鋼協会等での活動を通じて、国際連携を図りながらCO2排出削減に向けた取り組みを行ってまいりました。これらの活動には中国、インド も積極的に参画しており、発展途上国も参加しうる現実的でグローバルな枠組みとして「ポスト京都」の国際的枠組みのモデルとも言うべきものであります。世 界の鉄鋼分野では既存技術導入によるCO2削減ポテンシャルは年間約3億トンと試算されており、極めて大きな効果があるものと確信しております。

次に、安全に関する取り組みについて申し上げます。

近年、労働災害が後を絶たず、昨年は、一昨年に比べると改善が見られたものの、残念ながら劇的な改善とは至っていないのが現状であります。

安全活動は会員各社での取り組みを基本とするものと考えます が、鉄鋼連盟としても情報の共有化をベースとした有効な支援施策を継続的に検討、実施してまいります。会員各社におかれましては、関係協力会社を含め、一 丸となっての労働災害の撲滅に資する施策の実現につきまして、引き続きお願いしたいと思います。

さて、ここで鉄鋼連盟の社会認知度向上活動の一環としての、本年のトピックス的な取り組みについてご紹介したいと思います。

 今からちょうど 150年前の1858年、「近代製鉄の父」といわれる大島高任が我が国で初めて近代的な洋式高炉による鉄の生産に成功しました。そこで鉄鋼連盟は、本年を 「近代製鉄発祥150周年」と位置付け、年間を通じて各種記念イベントを開催してまいります。各地の製鉄所でのイベントにおきましてもPR活動を予定して おり、地域の皆様、また小・中学生を含め、普段、あまり鉄に関わりを持たない皆様にも、鉄のこと、そして鉄を取り巻く様々なことに少しでも興味を抱いて頂 くとともに、「ものづくり」の大切さについて、幅広く訴えていきたいと思います。

また、本日は、記念のロゴマークを、舞台正面に掲げております。過去から現在、そして未来へ向けて、進化・発展し続ける鉄への思いを「人が活かす、人を生かす、鉄」というスローガンに込めて作成いたしました。

日本鉄鋼連盟では、関係各位のご理解とご支援を賜りながら、諸課題に取り組んでまいります。この場をお借りいたしまして、改めて、皆様方の引き続きのご指導とご鞭撻をお願い申し上げます。

結びにあたり、本日お集まりの皆様、また関係各位にとりまして、本年も有意義で実り多い年となりますことを心より祈念いたしまして、私の挨拶とさせて頂きます。ご静聴、誠に有り難うございました。

  荻原 健司

  経済産業大臣政務官

  並木 正芳

  環境大臣政務官

多田 博 副会長 乾杯

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