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会長コメント

米国通商法201条包括的鉄鋼調査に関する大統領決定について

2002年3月6日
(社)日本鉄鋼連盟
会長  千速 晃

今般、米国大統領が鉄鋼製品への包括的輸入制限措置の発動を決定した。これは、米国鉄鋼業が抱える問題を輸入鋼材に転嫁し、米国鉄鋼業救済の為に我々鉄鋼輸出メーカー及び米国需要家に過大な犠牲を強いる不当な決定であると言わざるを得ない。

米国鉄鋼業の経営悪化の原因は、国内需要の増加を上回る米国ミルによる設備拡張、高炉ミル間及び高炉ミル・ミニミル間の価格競争、自動車向け等の需要減退、及び米国ミルが抱える過重なレガシーコストといった米国鉄鋼業自身の問題であり、この事実を無視して、問題を全て輸入鋼材に転嫁しようとする今般の決定は誤りである。

また、米国の鋼材輸入数量は1998年をピークとして約30%も減少している(1998年4,200万トン、2001年3,000万トン)。米国国 内の鋼材市況は上昇に転じ、米国ミルの操業率もフル稼働に近い状態(約90%)である。鋼材の輸入制限を正当化する合理的な根拠は何もない。

米国通商法201条に基づく輸入制限は、米国産業が競争力の回復に向け自らアクションをとるにあたり、一時的な猶予を与えるための補助的手段のはずである。すなわち、米国鉄鋼業が自ら努力して真摯にリストラを実行することが前提とされるべきはずである。

しかしながら、今日現在、米国鉄鋼業からは何ら現実的なリストラ案も提示されておらず、かかる状況下において、国内産業保護を目的にこのような一方的輸入制限措置を決定したことは不当である。

更に、本調査は昨年6月に発表されたブッシュ大統領の多角的鉄鋼政策に基づき実施されたものであるが、同政策のもう一つの柱である過剰能力問題については、先のOECD鉄鋼ハイレベル会合にて、各国政府が真摯に取り組んだ結果として、2005年までに1億2,000万トン近い能力削減見通しが示されている。

また、世界的にも市況回復の兆しが出てきている中、今般の米国大統領決定は、鉄鋼貿易正常化への各国の取り組みに水を差しかねないものであり、自由貿易主義に基づく健全な世界鉄鋼貿易を著しく歪める脅威である。

今後は、すみやかに決定内容を精査し、WTO提訴を含め、しかるべく措置を取るべく日本政府と協議してゆく所存である。

以上

本件に関するご連絡/お問合せ先:

(社)日本鉄鋼連盟 総務本部秘書・広報グループ
TEL:03-3669-4822  FAX:03-3664-1457

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